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聖女は孤独だ。同じ立場で、気持ちを分かち合える友達は誰一人いない。
あなたは聖女だからと、誰もが一歩後ろに下がり、壁を作る。その壁は薄いようで、どれもおそろしく頑丈だ。当然ながら、壁を壊してこちらに踏み込んでくる者などいない。
(わたしは一人で生きていかないといけない。今も、これからも……)
決意を新たにしていると、神殿の扉の向こうで、クレアを呼ぶ神官の声が聞こえてきた。
「聖女様。お勤めのお時間でございます」
「――ただいま、参ります」
うつむいていた顔を上げる。鏡には、聖女らしい控えめな笑みをはりつけた聖女が映っていた。
(わたしは聖女クレア。それ以上でもそれ以下でもない)
結婚相手が誰であれ、自分に課せられた役目は変わらない。王族に嫁ぐことは決定事項で、今回は相手が変わっただけだ。少なくとも、そのときのクレアはそう思っていた。
◆◆◆
連日、神殿に聖女の治癒術を求めて押しかける人は数知れず。今までは王都近辺からの患者が多かったが、最近は海を渡ってきた外国人まで訪れるようになっている。これは世界で聖女の認知度が高くなったことを表している。
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