212人が本棚に入れています
本棚に追加
そのおかげか、先週から始まった王太子妃教育も午前中のみになった。正午までマナーや教養をこれでもかと詰め込まれて、午後からは神殿でのお勤めに励む。諸事情により王太子の帰国も遅れているらしい。おかげで予定していた顔合わせはしばらく延期となった。
日々のルーティンを淡々とこなす。心を無にして与えられた役割をやり抜く。
しかし、聖女だって、中身はただの人間だ。
毎日たくさんの治癒術を使っていれば疲れるし、いくら慣れたと言っても聖女の笑顔を一日中キープするのもなかなかの苦行だ。
王宮に戻れば、見た目は美しいが毒味済みの冷めた食事、無駄に広いベッドが待っている。数人の侍女がクレアを待ち構え、体中をぴかぴかに磨き上げる。高い香油を使った全身マッサージはまどろみを誘うが、身体の疲れは取れても心の疲れまでは取れない。
そして何より、王宮は常に監視されているようで落ち着かない。気心の知れる人が身近に一人でもいたら違っただろうが、護衛をはじめ、皆の緊張感が伝わってきて気が休まるときがないのが現状だ。
最初のコメントを投稿しよう!