本編

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 金糸の髪に金色の瞳。それは建国の聖女を彷彿させる色だ。そして今は当代の聖女を示す色でもある。  姿見に映り込んだ己の姿を見つめ、クレアは息をついた。 (聖女なんて、なりたくてなったわけじゃないわ……)  それでも、聖女の道を選んだのは紛れもなく自分だ。後悔することはあっても、この気持ちを誰かに悟られてはならない。  どんな状況でも、完璧な聖女の仮面を被るのだ。民衆が望んでいるのは、聖女としての役割を果たす自分なのだから。彼らを失望させる言動や表情は慎まなければならない。  皮肉なことに、この半年で本音を隠すことにもすっかり慣れてしまった。  実家である貧乏男爵家への援助、その対価として王国に人生すべてを捧げる。それが自分の生き方。  だから、たとえ愛する男女を引き裂く邪魔者の役でも、最後まで笑顔で演じてみせよう。  ――――そう、思っていたのに。  逃れられない運命でも、本物の愛があれば覆せる。そんな嘘のような出来事がクレアの目の前で起こった。よくある物語のエピローグと同じ結末に、頭の理解が追いつかなかった。 (嘘でしょう……? 運命は、変えられないんじゃないの……?)
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