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村長以外の村人の賛同は得られたと自負していたウィルですが、今後の支援計画を説明し終えても、口を開く村人は一人も現れませんでした。みんな村長の発言を待っているようでした。
村長はしかめっ面をして、大きくため息をつき、腕を組みなおしますが、口を開く様子はありません。
沈黙が続き、『今回も話し合い決裂か』とウィルが諦めかけたとき、外から歌声が聞こえてきました。
「これセイレナの願い謡! そうよね、お母さん!」
歌声を聞いた子供が叫びました。
「セイレナって?」
「あ、子供たちがエレナさんの歌が大好きだったのに、セイレーン事件のせいで聞けなくなったでしょう? セイレーンの美しい声と優しいエレナさんを合わせて勝手にセイレナと呼んでいて。優しいセイレーンという意味らしいんですが、ごめんなさい、失礼ですよね。やめさせます」
ウィルの問いかけに、子供の母親が謝りました。
「優しいセイレーンですか。いいですね。エレナさんは喜ぶと思いますよ」
ウィルの言葉に子供の母親がほっとした表情を見せると、歌が終わりエレナが現れました。
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