セイレナの願い謡

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 ウィルは道路と港の整備に取り掛かりました。物流と人の行き来をスムーズにし、将来大きな船が入ることを見込んでいました。  エレナは子供たちに願い(うた)を教えながら、特産のレモンを使った土産品や食堂のメニューの開発を手がけました。  交通の便が良くなると少しずつですが、人が訪れるようになりました。   「……ウィル、さんのおかげで、村に活気が出てきました。……なにか、お礼ができればいいのですが」 「いや、僕だけじゃなくみんなのおかげだよ。エレナさんもね。だからお礼なんて」 「…………でも」 「あ……じゃあ、ひとつだけお願いしてもいい?」 「……なん、でしょう?」 「僕だけのために願い(うた)を歌ってほしい」  ウィルの依頼にエレナは微笑み、彼を見つめて歌い始めました。  エレナが歌い終わると、ウィルは彼女の左手を取りました。 「ありがとう。エレナさん、僕はキミの歌が大好きだ。それからキミ自身のことも。この村はこれからもっと大きくなれる。その(いしずえ)をエレナさん、キミと一緒に築いていきたい。僕のこの思い、受け止めてくれるだろうか」  突然のウィルの告白に、エレナは顔を赤らめうつむきながら、「……はい」と答えました。
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