セイレナの願い謡

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「――エレナとウィルは夫婦になった後も、アステルの発展のために尽くしました。そして二人の子供たちがバトンを受けて、仲間と一緒に今のアステルを作り上げたのです。エレナの歌は『セイレナの願い(うた)』として、現在のアステルに歌い継がれています」  エイダの隣でアステルの昔話を聞いていたケイトが目を大きく見開いた。 「おばあちゃま! セイレナって優しいセイレーンっていう意味だったのね! エレナさんって本当にいたのね? 子供たちって今もアステルに住んでいるの? どんな人かしら?」 「そうだねぇ、おやおや? ここにエレナさんと同じ、歌が上手で緑色の瞳のかわいい子がいるねえ?」  エイダはケイトの顔をのぞきこんだ。 「え? 私?」 「うん。そうだよ。エレナさんはおばあちゃんのおばあちゃんにあたる人。ケイトちゃんも食べたことのあるレモンハニーケーキは、エレナさんが考えたお菓子だよ」 「ええ~! 本当に!? キャー! 素敵素敵♪」  嬉しさを爆発させたケイトはベンチの周りを走り出した。 「おばあちゃま、私、『セイレナの願い(うた)』がもっと大好きになったわ♪ ずっとずっと歌っていきたい!」  再び土産店からオルゴールの音が流れ始めた。  アステルの埠頭では、ケイトのかわいい歌声が響き渡り、その音色が未来へと続く希望を奏でていた。
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