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ジルはエレナに付き添い、漁の様子を村人に聞いて回りました。
昨日は数艘の船が出ていて、天候の変化に気づいて港に急いで帰ったが、一番遠くに出ていたヒューゴの船だけが戻らなかったということでした。
どこかの島に避難しているかもしれないという村人の言葉にわずかな希望を抱き、エレナは海に駆け出しました。そしてヒューゴがいそうな島に向かって歌い始めました。
その日からエレナは、食堂で働いた後、海へ出かけて願い謡を歌う生活を続けました。
二日、三日と過ぎていき、ヒューゴの消息が分からないなか、漁村ではヒューゴのことを口にする人が減っていきました。
エレナだけがヒューゴの無事を信じて、願い謡を歌い続けました。そんなエレナを、ジルは見守り続けました。
十日ほどたって、ヒューゴの船が港に着いたという知らせが入ります。
エレナとジルは港に駆け付けました。
そこで二人が目にしたものは、港に流れ着いたヒューゴの名が彫られた船体の一部でした。
「こんな状態じゃ、ヒューゴは――」
漁師仲間の言葉に、エレナはその場で泣き崩れました。
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