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数日後、身なりの整った男性がジルの食堂を訪れました。
「ウィル! きてくれたのね!」
片付けをしていたエレナは、ジルの声を耳にして、厨房から出てきました。
「……ジル、さん。お客さまですか?」
「エレナ、この人は私の弟のウィル。ウィル、こちらはエレナ。手紙に書いたでしょ? ……ウィル?」
ウィルはまるで時間が止まったかのようにエレナを見つめたまま、動きません。
「ウィル? ウィル!」
「……は! あ、あのウィルです! 姉さん、僕は今天国にいるんでしょうか。目の前に天使が見えます」
「……今、地上に戻してあげる!」
ジルは笑いながらウィルの耳を引っ張りました。
「いたたたた!」
仲のいい二人の様子を見て、驚きながらもエレナはクスクスと笑いました。
エレナがこのときに抱いたのは、ウィルが面白い人だという印象でした。
ジルが以前エレナに話した救世主とは、ウィルのことでした。ジルとウィルの父は投資の成功者で、さまざまな事業を展開していました。ウィルも父のもとで勉強し、事業で成功していました。
「ウィルに、この村の支援を手紙でお願いしておいたの」
「姉さんにお願いされちゃあ、こないわけには……くるにきまってるでしょ!」
ジルの眉がピクリと動いたのを見て、ウィルはおどけて場を繕いました。
「このお調子者。それで支援は?」
「姉さん、僕も慈善事業をするほど余裕はないんだ。ここにくる前に村を見て回って調べてみたよ」
「どう思ったの?」
「手をかける価値はあると思う。支援するよ」
ウィルの言葉に、エレナは嬉しさで目を潤ませながら口を手で覆いました。
「…………ウィル、さん。ありがとうございます」
「エレナさん。僕に任せてください」
ウィルは自信満々に胸を張り、エレナを見つめました。
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