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エメにお茶を淹れながら彼はある仮説ができる事に胸を痛めていた。
1年ほど前に一度だけ宝物庫にある宝石を整理する為一度、助っ人として入っていた事があった。宝物庫の管理人と、執事の同僚、力仕事にダリルも作業員に入れ棚や台座を増やしていった。
宝石は基本的に管理人が触って整理は進めていく。
棚を運んだダリルに「静かに運べ。棚だって注文して作ってもらったからな」と指示をする。
宝物庫で保管される宝石の数は増えたが皆の仕事ぶりで管理人は実に管理しやすい部屋になったと満足していた。
それからしばらくしてセリーナの後にダリルが城からいなくなった。
一体彼らはどうしているのだろうか。
もしかしたらセリーナの家の都合で奉公が早く終わったは彼女がまわりに付いた嘘かもしれない。
そもそも彼女は好きな人じゃない人の結婚する事は複雑だと言っていたし、城よりも外の地に憧れている娘だった。
そしてダリルも故郷に帰ると言ったきり城から出て行ってしまった。
報酬金を沢山もらって城を出たとほかの衛兵達は言っていたが、その後は生活はできているのだろうか
どうして2人共同じ時期に自分の元を去ったのか考えた。
つまるところ彼は自分の知らないところで惹かれあっていたのだ。
ダリルは宝物庫の管理人と仲が良い。
もしかしたらセリーナと一緒になる事を考え、魔が差しティアラの宝石を取ったのが彼かもしれない。
しかし、それを返したという事はおふれを恐れたかセリーナが一緒ならば返して来いと言われたに違いない。
今となって犯人が誰かなんてどうでも良い事だ。
「グレイさんの紅茶が飲めなくなるなんて残念です」
美味しそうにお茶を飲むエメがそう溢したのでついクスっと笑った。
「そんな事言わないで。ご家族が待っていますよ」と言うと彼女はコクンと頷いた。
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