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城に戻りまず初めに行ったのは妃の結婚式が描かれた肖像画を使いに頼み部屋の壁に掛けてもらう事だった。
部屋に用意してもらった真ん中のテーブルに布貼りのトレーを置きその上にいくつもの種類の青い宝石が並ぶ。
それを肖像画を見比べながら一時間ほど時間をかけて2つの種類の宝石に的を絞る事ができた。
やはり鑑定するまでもないが王家のティアラに使われて青い宝石はサファイヤだろう。
深い青色のブルーサファイヤと、同じく全く似たロシア産のロシアン・サファイヤを妃に見せた。
「まあ、綺麗なサファイヤね」
妃の反応にグレイと一緒に安堵した。
「私が触っても?」
と妃が聞いたのでサファイヤを一つづつ彼女に渡す。
それを摘み彼女は光の反射具合を見るべく外の空の光にに向かい宝石をかざす。
すると彼女は残念そうに眉を伏せた。
「2つとも違うみたい。私の記憶だとあの青い石は確かこうやって光に当てると桃色が変わったわ」
そう言われ、宝石選びは再び振り出しに戻る事になった。
せっかく自信があったのに・・と落胆していると
「まあ、そう肩を落とされないで」
部屋に残ったグレイに声をかけられたがそれは彼も同じだった。
「休憩がてら紅茶でもお淹れします」
彼はそう言うと温かい紅茶とクッキーをテーブルに用意してくれた。
お茶は弱気になった心をほぐした。
「すごく美味しいです・・・」
そう呟くと馬車の時みたいにお辞儀をする。
「私、宝石を当てる事ができるか不安になってきました」
不覚にも彼の前で弱音を吐いてしまった。
しばし、お互い無言になったので彼に呆れられたかと思い「すみません」と小言で謝ったが彼は意外にも「なぜ、あなたは何度も謝るのです?」
と逆に問われた。
「だって私、庶民だし任された仕事も上手くいかなかった。
グレイ様がついていて下さったのにすみません」
とひたすら謝る。
自分でも分からないが彼に失望されるのが何故か怖いのだ。
せっかく妃の計らいで私につく事になって親切にしてくださったのに、頼りたいのに彼の面子を傷つけたからと嫌われたくないのだ。
ポロポロ流れる涙を自分でハンカチで拭う。
その様子をなぐさめる様に彼は
「私はあなたをただの庶民の娘と思ってはいませんよ。むしろ、これまで励みにしていたのです」
と告げる。
彼が自分を見つめる目は明らかにいつもの目と違って見えた。
それに「これまで励みにしていた」というのはどういう意味だろう。
そう疑問を抱き彼を見返して彼に「グレイさん、私を知っているんですか?」と問う。
「ええ。覚えていませんか?私の事」
そう彼は言うが全く覚えがない。
彼はこうしたら思い出すかもと片方の額に流した前髪を下ろし、モルクルとは別のシャープな眼鏡を掛け直す。
その顔をじっと見つめた。
最初は誰か心当たりはなかったが、しばらくすると1人の人物を思い出し驚いた。
「もしかしてあの時の失恋したお客様・・・」
「そうゆう風に覚えられてるのは癪ですが仕方ないですね」
バツが悪そうに彼は咳をして自分の過去の話をしてくれた。
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