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第十一章 痛み
ベッドの下から這い出す。
彼は寝言を言っているようだ。
「何をやっても失敗ばかり。
上司に怒られる、同期の足を引っ張って白い目で見られる。みんなが僕を邪魔者のように扱う。
きょうだいが亡くなってから親の期待を一新に受けていい会社に入ったけど。
僕にはやっぱり無理だよ。
自分で選んで入った会社なのに、一生懸命やってるのに、何一つ上手く行かない」
夢香の頭にこの二年間の事が思い出され胸が苦しくなった。
ーーー私だって社会に出てから失敗してばかりだった。それでも夢を諦めずにデザイナーの仕事に就けた。就けたからと言って上手く行くなんて保証は無いけど。
でも今までダメだからと言って自分の未来を全部捨てるなんて、嫌だ。
あなたの未来だってそうでしょう?
夢香は彼の頭を撫でながら言った。
『大丈夫。
君の生き方を見ていてくれる人は必ずいる。
私は見てるよ、君の事』
彼の頬から涙が溢れ出て頬を伝った。
それはとても愛しいものに思えた。
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