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第十四章 登場
ドアがガチャガチャと音がしたかと思うと、ドアが開いた。
夢香は驚いて飛び退いた。
幽霊の彼が普通にドアを開けて入って来たのだ。
住職は立ち上がると彼に向かって頭を下げた
カメラマンが彼の方にカメラを向けた。
彼は緊張した面持ちでカメラをチラッと見てから、住職に向き直り挨拶をした。
女性レポーターが聞いた。
「霊はいつ現れるんでしょう?」
ーーーえ?!彼、目の前にいるじゃん?!見えてないの?!
「ずっと目の前にいらっしゃいますよ」
ーーーそうそう!
女性レポーターがキョロキョロと周りを見渡す。
ーーー彼が見えないの?
女性レポーターがカメラの前に立ち、喋り始めた。
「では霊が出て来るまで、この部屋の住人にインタビューしてみましょう」
ーーーここで喋れば良いのね。
夢香は壁に嵌め込んである全身ミラーで服と髪の毛をチェックしてからレポーターの前に立った。
「なんで幽霊が出ると噂のあるこのマンションに引っ越して来たのですか?大家が告知しなかったとか?」
レポーターは手に持っていた雑誌をカメラに向ける。
幽霊記事が載っていたあの雑誌だ。
夢香はコホンっと咳払いするとマイクに向かって答えた。
『ええ。雑誌を見て驚きました。
事故物件だなんて聞いてなくて。』
と言って管理人を見た。
管理人は腕組みをして、相変わらずの仏頂面でこちらを見ている。
「いえ、告知はされました」
急に彼が話に割り込んで来た。
『ちょっと!住人は私なんですけど!』
彼は続けた。
「でも、姉さんに会いたかったから」
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