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第六章 霊現象
あれから幽霊は毎日夜中に現る。
現れてはベッドに寝て朝になると消えてしまう。
特に何かされるわけではない。
ーーー幽霊が寝るってどういう事?
幽霊の奇妙な行動に戸惑いながらも、慣れて来たのかベッドの下から這い出して観察するようになった。
男性。同じ年くらいか。
優しそうな顔をしている。
スーツを着ているので普通の事務系か営業職なのだろう。
どこも汚れてないし、顔も綺麗だ。
これでは何が理由で亡くなったのか分からない。
怖さも薄らいで、観察出来るようになって来たとはいえこのままという訳には行かない。
毎日来られたのではこちらが寝不足になる。
刺激しないように小声で話しかけてみる。
『もしもーし、幽霊さん。起きてくださーい。
ここは私のうちでーす。
即刻、ここから退場してくださーい』
なんとも間抜けなセリフだ。
彼はピクリとも動かない。
埒があかない。もう少し大きな声をだしてみた。
『すみませんけど、起きてくれませんか?
ここにいられても迷惑なんです』
彼の身体がガタガタ動き出した。
ーーーえ?!怖い!怖い!
その瞬間だった。
部屋の電気がパチパチと点滅し始めた。
ーーーなにこれ?
今度は壁から、
ドンドン!ドンドン!
と音がした。
ヒィッと叫んで振り向く。
後の壁だけでなく、横の壁からも前の壁からも四方から手で叩いているようなバタバタ!バタバタ!と音が聞こえる。
そして、ドン!と床から突き上げるような衝撃がしたかと思うと夢香の身体が宙に浮いた。
ーーーうそ?!
宙で身体が回転したと思った瞬間、床に激突し、そのまま気を失ってしまった。
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