第九章 接触

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第九章 接触

 夜になり彼が現れたと分かるとベッドの下から這い出した。  今日はいつものように身体を投げ出すように横になっているのではなく、体育座りを倒したような格好で丸くなっている。  近づいてみる。  耳を澄ますと何かブツブツと寝言を言っている。   「ごめんなさい、ごめんなさい‥‥やり直しますから怒鳴らないでください‥‥」 ーーー会社で上司にパワハラを受けて自殺した人の霊とか?  そうか。虐めを受けての自殺。  誰にも愛されない自分に絶望して‥‥。  でも、分かったところで私に出来る事はない。  私が彼に出来る事。  頭を撫でてあげるとか。  それでもいいのかな。  そう思いながら恐る恐る彼に手を伸ばした。  霊に触れれるのだろうか?  指先が彼の頭にコツンと当たった。  優しく優しく撫でる。    このままじゃいけない。  彼を成仏さてあげないと。  ここはあなたの住む世界ではないのだから。
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