6人が本棚に入れています
本棚に追加
4:40 AM 海上・航空自衛隊 硫黄島航空基地
まだ朝日が顔を出さない絶海の孤島に佇む小さな航空基地に、けたたましいサイレンの音が鳴り響く。
硫黄島南方の海上に、航空機と思しき機影を硫黄島基地の警戒レーダーが捉え、この報告を受けた硫黄島基地司令官は、定期演習のために横須賀から出向していた護衛艦出雲に対して、艦載機として搭載されているF-35戦闘機を緊急発進させる命令を発令した。
本来この日は、海上自衛隊と航空自衛隊の合同演習を予定していのたが、予定外の来客を出迎えるために出撃した海上自衛隊の最新鋭戦闘機は、またたくまに護衛艦出雲の飛行甲板を駆け抜けると、大空へと羽ばたいて行った。
「作戦司令部からエルフリーダー。目標は南南西から本島方面に接近している。君達は直ちに目標に接触し、未確認機の写真撮影と領空接近の警告を行え」
護衛艦から飛び立った2機の戦闘機は、海上自衛隊横須賀基地に所属する、スカイエルフ隊所属の戦闘機で、現在目標に向かって飛行を続けているのは、隊長機のソラ・ナギノ中尉と、僚機のアイカ・ミヤザキ少尉の2名である。
彼女達の所属するスカイエルフ隊は、自衛隊史上初となる女性のみで運用されたチームであり、合計で5機が所属する戦闘機のパイロットや機体の整備員など、このチームに関しては、その全てが女性のみで運用されている特別な航空隊である。
更に、彼女達が無線で使用するコールサインはエルフ。
これもこの隊が誕生する際に、彼女達自身が命名した名前なのだと言う。
「エルフリーダーから司令本部。1時の方向から接近する機影をレーダーで確認。本機はこのまま接近し、指示通りに撮影と警告を行う」
作戦司令部にそう報告を入れながら、ナギノ中尉は未確認機の正体を推測し始めた。
防衛省からの情報によれば、小笠原諸島の南の海上で、つい先日からロシア海軍と中国海軍が合同軍事演習を行っていると報告を受けたばかりだった。
その演習を行っている艦隊の中には、中国海軍の空母遼寧が含まれている事も分かっていて、その情報から推測するに、彼女は中国海軍の航空機である可能性が極めて高いと推測を立てていた。
最初のコメントを投稿しよう!