Emergency Call

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小笠原諸島のような小規模な離島は、沖縄諸島で言う沖縄本島のような主要都市を持たないため、本作で描いたような救急患者の搬送体制には極めて脆弱であると言わざる終えない。 更に、小笠原諸島と東京本土を結ぶ民間の空路は存在しないため、民間人が小笠原諸島を訪れるには、約1000キロの道のりを24時間かけて船で移動するしかない。 また、台風などの悪天候時には定期船が欠航する事も止む終えず、その点を見てもこのような緊急事案に対する対応能力は決して高いとは言えないだろう。 しかし仮に、硫黄島基地のような航空機地に、既存の緊急対応機にプラスしてオスプレイのような機体を追加配備する事が出来れば、この脆弱性はかなり改善される事になると思う。 ではここで、オスプレイと自衛隊が運用するその他の輸送ヘリコプターの性能を比較してみよう。 UH-60 ブラックホーク 乗員2~4名 搭乗可能乗客11名 積載量5220kg 最大速度295km/h 巡航速度278km/h 航続距離(最大値)2200km CH-47 チヌーク 乗員3名 搭乗可能乗客33~55名 積載量10886kg 最大速度315km/h 巡航速度240km/h 航続距離(最大値)2252kg V-22 オスプレイ 乗員4名 搭乗可能乗客24~32名 積載量9070kg 最大速度575km/h 巡航速度446km/h 航続距離(最大値)3590km このように、一回の乗員の輸送力だけを切り取れば、オスプレイはチヌークに劣る。 だが今回のケースのような長距離緊急輸送を対象にした場合、垂直離着陸能力を持つヘリコプターと、同じ能力を持ったティルトローター機(オスプレイ)とでは、飛翔速度に大きな違いがある。 今回のように一秒を争う緊急事案の場合、求められるのは大容量輸送よりも高速輸送であって、オスプレイはその点に対して非常に優れている事が、この比較でも分かって頂けると思う。 この点から見ても、このような離島にオスプレイのような機体が配備される事は非常に望ましい。 だが防衛省は、現在陸上自衛隊が保有している14機のオスプレイ全てを、千葉県の木更津駐屯地に配備している。 例えばこの内の二機を硫黄島基地に暫定配備する事が出来れば、小笠原諸島全域の安定化に大きく貢献出来ると私は思っている。 今回この小説を読んで頂いた皆様には、この地域をモデルケースにした物語を見て頂いた訳だが、このような問題で悩んでいる地方の人々は、まだまだ多いのだろうと思われれる。 本作ではそう言った離島における輸送体制の脆弱さや、緊急時における各省庁の垣根を超えた連携体制などを描いたつもりであるが、本作を読んで頂いた皆様が、こういった事案に少しでも目を向けて頂ける事を願っている。 ―完―
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