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4:57 AM 硫黄島基地からはるか南の海上
ソラ中尉達は、レーダー上で捉えた未確認航空機に接触し、その機影を写真に収めた。
問題の未確認機の正体であるが、それはソラ中尉が事前に予想した通りの中国軍偵察機で、彼女達は早速この偵察機のインターセプトと警告射撃を行った。
警告射撃を受けた中国軍偵察機は、すぐにソラ達の自衛隊機の指示に従い進路を変更すると、それ以上日本の領空に接近する事なく、ソラ達の前から去った。
「すぐにこちらの指示に従ってくれて良かったですね中尉。私はスクランブルがかかると、いつだって恐怖と不安に押し潰されそうになってしまって」
緊急出撃任務が完了し、護衛艦出雲へと帰還している途中。アイカはソラにそう話しかけて、今回も無事に帰還できる事に安堵しているようだった。
「誰だってそうさ。私だって緊急発進命令で飛ぶ時は怖い。目標を確認するまでは、それが非武装機なのか武装した機体なのかは分からないからな。でも、それでもお前が私の横を飛び続けてくれているから、私だってこうして飛び続けていられる。いつもありがとう。少尉」
アイカがソラに言った事は、もしも共に飛んでいる上官が男性なら、「そんな事では国は守れない」などと言う言葉で叱責されていても可笑しくない内容であったが、ソラ・ナギノと言う上官は、決して部下の気持ちを頭ごなしに否定する事をしない上官だ。
それと彼女は、たとえ仲間が弱音を吐いてしまったとしても、そうした相手の気持ちを正確に読み取り、常に仲間に寄り添い、理解と感謝を込めて励ます事を欠かさない人である。
今回のケースでも、不安にかられたアイカの気持ちに寄り添い、同調し、「お前がいてくれるから」という言葉でアイカを励まし、彼女に対して目の前の恐怖に挫けない精神の強さを授けて見せた。
また、こうした事を欠かさないソラの評判は自衛隊の中でも非常に高く、男性か女性かを問わず、彼女が一つの隊を仕切るようになってから、ソラの元で仕事をしたいと言う自衛隊員が途切れた事は一度も無かった。
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