Emergency Call

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10:05 PM 小笠原村役場からの緊急要請を受けて出動しようとしているオーシャンライナー隊のオスプレイが、エンジンを始動し駐機場を離れようとしている。 「管制塔、こちらオーシャンライナー。離陸前チェック終了。全システム異状なし」 「管制塔からオーシャンライナー、了解した。滑走路への進入を許可する。誘導路を移動せよ」 「オーシャンライナー了解。現在誘導路を移動中」 「管制塔からオーシャンライナー。了解」 「オーシャンライナーから管制塔。滑走路に到着。離陸準備よし」 「オーシャンライナーへ、管制塔了解した。離陸を許可する。離陸後は北へ向かい、父島航空基地のヘリポートを目指せ。現在硫黄島付近の天候は曇り、高度150メートル付近で南南西の突風あり。注意せよ」 「オーシャンライナーから管制塔。離陸許可を得た。オーシャンライナー発進する」 こうして硫黄島基地を発進したメグミのオスプレイは、海上自衛隊・父島航空基地へ急行した。 「コノハ大尉、行っちゃいましたね。消防庁のヘリも迎えに来てるはずなのに」 宿舎の窓からメグミの機体が発信して行く様子を眺めていたアイカは、少し不満そうな顔をして、二段ベッドの下段に座っていたソラに向かって話しかけた。 「消防庁のヘリは東京ヘリポートから来るんでしょ? あそこから父島までは大体1000キロ。ここからなら父島までは300キロ弱。巡航速度だってオスプレイの方がはるかに速いからね」 アイカと同じ様にメグミ達が離陸する様子を眺めていたソラが、風呂上がりの髪をタオルで拭きながら、そっと答える。 「でも、この基地のヘリが定期点検に入る事は事前に知らされていた訳だし、そのための役割分担なんだと思いますけど」 アイカの意見も分からないでもない。 アイカの言う通り、役割分担とは本来そう言う物だ。 そう思ったソラは、アイカの言った言葉に静かに頷くと、夜風が吹き込む窓枠に手をかけて、とあるメグミあるエピソードを話し始めた。 「メグミさんはね、あれに乗る前はAH-1Sに乗っていたのよ。あれは何年前だったかの夏の暑い日。彼女は相模湾沖での演習に参加するために、三浦海岸の辺りを飛行していたの。そしたら、海に流されてしまった子供が溺れかけているのを、偶然に発見した」 ソラの話をここまで聞いた所で、その話の続きに興味を持ったアイカが、ベッドの上段から身を乗り出して話の続きを聞こうと集中している。 そんなアイカの様子を見てフフッと笑ったソラが、話の続きを語りだした。 「降りたらしいわ。メグミさん。所属基地の許可も取らずに、砂浜に。勿論無断で。それで、沖に流されている子供の所に泳いで駆けつけて、ギリギリの所で岸に連れ戻したの」 ソラは身を乗り出して話を聞いていたアイカの様子を再び確認するが、アイカはそのままの態勢でソラの話に聞き入っている。
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