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 まずは王道の「四つ葉のクローバー」。  お祭りの金魚すくいでもらえる巾着タイプの金魚袋にびっしり入れられてる。  四つ葉のクローバーを見つけると幸せになれるという言い伝えは誰でも知ってて、子供の頃に誰しも探してみたことがあるよね。  ただフーコのそれは異常で、「幸せになれる」と聞くと毎日のように一人で探し回ってた。夜になっても懐中電灯を使って探してて、お巡りさんに何度も家に送られたことがあるって言ってた。  そうやって集めた四つ葉のクローバーは数え切れない。まあもうとっくに枯れて変色してるけどまだ取ってあったんだね。    あとこれも縁起物の代表格「立った茶柱」。  フーコは貧しかったから茶葉を入れてお茶を飲むなんてことはなかった。  だからクラスの友達に「茶柱が立ったらそれ頂戴」ってお願いして回ってたけど、それだけじゃなくて小学校の生徒全員に手紙を送ってたな。  何かそれで先生に注意されてた記憶がある。  茶柱のコレクションも無数にある。でもいつだったか「本当に立ったやつか分からないよね」ってフーコが自嘲しながら公園のブランコで私に呟いた時、なんか急にフーコが大人になったように感じたのを覚えてる。   あとこれは「宝毛(たからげ)」だ。身体に生えてくる白くて長い毛ね。私も自然に抜けたやつを1本あげた。    生えてた部位ごとに分けて保管されている。どこに生えてたかでご利益が違うんだって熱弁されたこともあった。  中学の時に宝毛を自由研究のテーマにして、クラスで発表して大笑いされてたな。皮膚科とかエステとかスピリチュアル系の先生たちにアポとって取材してたくらい本人は大真面目だったのに。    そんな風に思い出を懐かしんでいたんだけど、私が見たことないコレクションも増えてるから興味深くて色々見ちゃった。  ん?これは何だろう。他のと同じように金魚袋に入ってるけど。黒い金平糖?  袋をつまんで凝視したら思わず小さな悲鳴と共に袋を放ってしまった。  蜘蛛じゃん!  そういえば「今は朝蜘蛛を集めてるの」って目をキラキラさせてて、親友ながらさすがに引いたことがあった。その蜘蛛の死骸だ。気持ち悪ぅ。  フーコは幸せのためなら手当たり次第だからね。  これを機にそろそろ仕分けを再開しようとしたんだけど、『幸せコレクション2』と書かれた大きめの箱が目に入ってしまった。
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