4

1/1
前へ
/4ページ
次へ

4

 荷造りを終えて、私はフーコにシリコンで足の型を取ってもらってる。  荷造りの手伝いのお礼ってことで、私のギリシャ型の足を造ってくれるんだって。 「これが日本で最後の作品になる?」  フーコは少し寂しそうに「うん」と答えてから続けた。 「ミコにはずーっとお世話になってきたから是非受け取ってほしいの。こんなんで今までの借りを返せるとも思ってないけど」 「いやいや、世界のフーコに自分のためだけに作品造ってもらえるなんてこんな光栄なことないでしょ。親友で良かったよ」 「ありがと。でも変わり者のアタシと親友でいるのは本当は大変だったでしょ?」 「大変でしたよぉそりゃあ。でも今は一番の自慢だし」    というのは−−−  フーコは幸せを求めて縁起物コレクションを続ける中で徐々にエスカレートしてって、社会人になった頃には「福耳」「大きな鼻」「ギリシャ型の足」とかの実物を欲するようになっちゃったんだって。  でも、彼氏や知人に「その福耳を切らせて」なんて言えるわけもない。  そこで自分で造形することを思い立って、福耳や鼻を造ってみたら自分の才能に腰を抜かしたらしい。  身体の部位だけでなく青い鳥や白い蛇なども造り物だ。朝蜘蛛は本物だけど。  で、作品をSNSに投稿してみたら凄まじい才能だと瞬く間に大きな話題になって、あれよあれよのうちにハリウッドの大作映画の美術スタッフになってた。  さらには、海外で働いているうちに人脈が広がって大金持ち王国の王子に見初められてこの度結婚が決まったの。  つまりフーコはもうすぐスーパーセレブなお姫様になるわけ。 「縁起が良い」「幸せになる」という迷信を信じ続ける強固な意志と根性が、異次元レベルで一気に奏効した形だ。これはフーコの超絶粘り勝ち。  −−−ってわけなのよ。  今までのように会えなくなるのは寂しいけど本当に本当におめでとう!!                                               <終>
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加