トポガン滑り

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トポガン滑り

30分たった後、むっくり起き上がったペンギンの「こうりやま・れいと」さん。箸で食べれるんだろうかと思いながら、前にコンビニでもらった箸を添えておいたら、苦も無く箸でズルズルとカップ麺をすすって汁まで飲んで完食。 やっぱりペンギンじゃないんじゃないかな・・・。ペンギンってカップ麺食べるんだっけ。やっぱ俺の目がおかしいんじゃないか。などなど、疑問の渦の中にいるのに、冷静を装ってスマホを見たりお茶より水の方がいいかとコップに水をもってきたりする自分がいる。 「ごちそうさまでした。なんだかすっかりお世話になってしまって、ありがとうございました。」 「あ、いえ。その、カップ麺くらいでしたら。」 「ごみを出すのを忘れてしまっていて、慌ててたものですから。それに昨日からご飯食べてないのも忘れてて。」 申し訳なさそうに小さい体を、さらに小さくするペンギンをみて何か言える人がいるだろうか。 「ああ、そのぉ俺も覚えがあります。引っ越しって、てんぱっちゃいますよね。なんかもぉ訳が分かんなくなるっていうか。」 「そう!そうなんですよっっ。あれをやったかな、これは済ませたかなって頭がなんか混乱してしまって。親切なお隣さんで良かった。こんなふつつかものですが、仲良くしていただいて感謝の言葉もありません。明日からは仕事ですし、とにかく少し片づけて置きたくて。」 「それでこんな時間にゴミを。ここはゴミをあんまり早く出すとダメなんだ。朝になってから出した方がいいかな。」 「そうなんですか。わかりました。」 「あの、それでお仕事って・・・。」 「氷の会社なんですよ、うち。それで明日から仕上げの作業がありまして。あっ、そうだ。お礼と言っては何ですけど、チケット差し上げます。良かったら、どうぞ。」 「え、あ、はあ。」 「なにしろ会社の中でトボガン滑りで氷をチェックできるのが少なくて。」 なんだろう、専門用語かな。氷の仕事のことらしいな「トボガン滑り」って。いかにも分かった顔をして聞いてたけど、まあ説明されても分からないだろうし。 そのあと、ペンギンの「こうりやま」さんは自分の部屋に帰っていった。ゴミは俺が引き受けておいた。だって、あんな小さい体で大きいゴミ袋を運ぶなんて無理だろう。 俺も明日は仕事だしな。ゴミ出しをしてから会社に行こう。
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