君の曲が私に届くまで、

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「ラノさん、この前も言ったと思うんですけど私は恋なんてする気はないんです。……誰かの恋を応援したい立場だから。」 《でももったいなくない? あたしはもういい大人だけど、そぞらちゃんはまだまだ青春できるじゃん。恋愛なんて特に学生のうちにしかできないよ〜。》 「それでもです! ……それよりも、私はラノさんの恋愛事情を聞きたいんですけど。例の上司とはどうなったんですか?」 《この流れでそれ聞いてくる?》 「教えてくれるまでしつこく聞くので。」 《意外とそぞらちゃん鬼〜。》  なんて言いながらも、私には分かる。ラノさんが嬉しそうに、けど恥ずかしそうに声色を小さくしているところからバレバレだ。  私は、恋なんてできない。  恋に憧れはあるけど、やっぱりできそうにない。恋したって叶わない事がほとんどだって、知ってしまっているから。  いいところでラノさんとの通話を切り上げて、ヘッドホンを付け直す。  手慣れた手つきでAOさんの曲のミックスリストを流しながら、何と表現していいか分からない感傷に浸る。  私には、こうやってAOさんの歌に恋い焦がれているほうがお似合いだ。
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