異音

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青ざめた妻の言葉に「まさか」と笑ったものの、妻のやつれ具合は前に暮らしていた家と同様のものだった。 「物音ってどんな?」 仕事で家にいないときが多い俺はそう質問した。 「眠っていたら誰かが歩く音が聞こえてきたり、シャワーの水が勝手出る音がしたり、昨日はお経を読んでいるような声まで聞こえてきたの」 妻は自分の体を抱きしめて言う。 その目には涙が滲んでいて嘘をついているようには見えなかった。 更に妻の訴えは、前に暮らしていた家にいたときと全く同じ異変なのだ。 「まさか、家に問題があるんじゃなくて、俺達になにかがついてるのか?」 引越し先でもなにも変わらないということは、もうそれしか考えられなかった
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