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生きていくためには、お金が必要だ。
私が料亭で、調理人として働くのを反対していた両親。
料理学校までは花嫁修業になるだろうと言って賛成してくれていたけど、卒業後、料理人の道を選んだら、父に激怒された。
だから、実家に金銭的な援助は期待できない。
私が仕事を辞めたと知った両親は怒るどころか、大喜びして早く実家に戻れと頻繁に連絡がくる。
そして、お見合い結婚へ……
――実家に戻ったら、お父さんが決めた相手と結婚させられてしまう。
いつでも自分が正しいと思っているような人だ。
父は飲食チェーン店の経営者として成功し、祖父の仕出し屋の跡を継がなかった。
仕出し屋なんて儲からないと笑う父に対し、祖父は美味しい料理を出し、父を唸らせ黙らせた。
『食べたいものを出せるのは、客の顔が見えているからこそだ。きちんと客の顔を見て料理を出すんだぞ』
父の仕事を否定せず、祖父なりのアドバイスをし、調子に乗っていた父を諫めたのだ。
そんな祖父がかっこよくて、私の誇りであり、憧れだった。
――おじいちゃんが今の私を見たら、なんて言うんだろう。
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