5 銀杏黄葉

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 大通りの銀杏並木を歩き、私と現比(ありひさ)は山路へ戻ってきた。  地下鉄にはに乗らずにバスを使ったけれど、その理由が――   「地下鉄の乗り方がわからない!?」 「謎の機械がある」  もしかして、自動改札機のことを言っているのだろうか。  電子レンジや冷蔵庫は使いこなせても、自動改札は慣れないらしい。  蓮華楼(れんかろう)で見た現比のかっこいい姿は幻だったに違いない。  お見合いがあった日、着物を着替えたら、その日はもう動けなかった。  ――起き上がれない。  次の日になっても起き上がれなかった。  悔しくて情けない気持ちで天井を眺めていた。  昨日、言われたことが忘れられない。 『噂で聞いたのですが、立栞さんは料理を作れなくなったとか』 『料理の作れない料理人を雇う店はありませんよ』  幸せなことを思い出すより、嫌なことばかり思い出してしまう。  ――こんな弱い私に、きっと現比も呆れている。  そう思った時、犬の足が私の顔にのっかった。 「むぶっ!?」 「立栞。体調はどう?」  肉球がぷにっと顔に触れ、やわらかくてあたたかい。
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