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『立栞、うまいなぁ。お前はきっといい料理人になる』
――ああ。おじいちゃんだ。
やっぱり二人は似ている。
不思議と、今は吉浪での苦しかったことを思い出さなかった。
狛犬の『手当て』が効いてるのかもしれない。
裏ごししたさつまいもに、砂糖を加え、練りながら混ぜ合わせる。
そして、祖父が作る芋ようかんに入るのは――
「バター、置いとくよ」
「ありがとう」
現比も知っていて、芋ようかんに入るバターを手渡してくれた。
鍋を弱火にかけて練ると、さつまいもの中にバターがとろりと溶けて消えていく。
沸騰させた寒天液を数回にわけて混ぜ合わせ、さらに練る。
後は粗熱を取って型にいれて冷やせば、祖父が好きだった洋風芋ようかんの完成である。
『どうだ。ハイカラな味がするだろう?』
祖父の得意気な顔が思い浮かび、笑みがこぼれた。
――バターが入ってるだけで、まったく違う味がする。
芋ようかんが固まるまでは、現比が作ったものをお弁当箱につめていく。
でも、なんだか秋らしさが足りない。
「ねえ、現比。お弁当に秋らしいものが欲しいわね。庭の紅葉をとってきて、飾りにする?」
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