5 銀杏黄葉

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「立栞、これで」  現比は銀杏の型を私に見せた。  ――ああ、なるほど。  たしかに同じ金色をしている。 「わかったわ」  銀杏の型を現比から受け取った。  冷蔵庫を開けて、芋ようかんが固まっていることを確認してから、銀杏の型で芋ようかんを抜いていく。  お弁当の小さな枠に入れるのは、金色の銀杏の葉。  それが入るだけで、秋らしさが増して素敵なお弁当になった。 「紅葉は紅葉でも、これは銀杏黄葉(いちょうもみじ)ね」  秋になって色づくのは、紅葉、銀杏などの落葉樹たち。  大通りの銀杏並木、それから、現比と約束しているギンナン拾いも楽しみだ。 「現比。味を見てくれる?」 「いいよ」  型から抜いて余ったところは、私と現比で味見をした。  ――うん、美味しい。  祖父が作ってくれたのと同じ味がする。  現比も懐かしそうに目を細め、味わっていた。 「ねえ、現比。おじいちゃんが蓮華楼の料理長に芋ようかんを食べさせた時、なんて言ったの?」  挫折したと言っていた料理長。  料理長と私の悩みは同じではないけど、どうやって立ち直ったのか知りたかった。
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