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「立栞、これで」
現比は銀杏の型を私に見せた。
――ああ、なるほど。
たしかに同じ金色をしている。
「わかったわ」
銀杏の型を現比から受け取った。
冷蔵庫を開けて、芋ようかんが固まっていることを確認してから、銀杏の型で芋ようかんを抜いていく。
お弁当の小さな枠に入れるのは、金色の銀杏の葉。
それが入るだけで、秋らしさが増して素敵なお弁当になった。
「紅葉は紅葉でも、これは銀杏黄葉ね」
秋になって色づくのは、紅葉、銀杏などの落葉樹たち。
大通りの銀杏並木、それから、現比と約束しているギンナン拾いも楽しみだ。
「現比。味を見てくれる?」
「いいよ」
型から抜いて余ったところは、私と現比で味見をした。
――うん、美味しい。
祖父が作ってくれたのと同じ味がする。
現比も懐かしそうに目を細め、味わっていた。
「ねえ、現比。おじいちゃんが蓮華楼の料理長に芋ようかんを食べさせた時、なんて言ったの?」
挫折したと言っていた料理長。
料理長と私の悩みは同じではないけど、どうやって立ち直ったのか知りたかった。
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