2 祖父の店

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 それを見た瞬間、走り出して玄関の戸を開けた。 「おじいちゃん!」  いるはずのない祖父を呼んだ。  私の声が誰もいない家に響き、風が木の戸を鳴らした。 「あ……」  ――なにしてるんだろう。  私は祖父に会いたかったのだと気づいた。  話したいことがたくさんある。  でも、もう話せない。  喉の奥が痛み、涙がこぼれた。 「おじいちゃん……」  ふわっと暖かい空気を感じて、顔を覆った手をはずすと、そこには私の前を歩いていた白い犬が寄りそっていた。 「もしかして、お前が店を守ってくれてたの?」  犬を抱き締めると安心感があり、なおさら涙が止まらくなって困った。  でも、誰もいないのだから、泣いてもいい。  いろんな感情が混じった涙が流れ、そこでようやく自分の気持ちに気づいた。  ――私、ずっと泣きたいのを我慢してたんだ。  優しい犬なのか、じっとしていて私が泣き止むのを待ってくれていた。  散々泣いて、お腹がぐうと鳴る音で我に返った。 「お腹空いた……」  すでに日が傾き、玄関から奥に続く廊下が薄暗い。
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