3 怪しい男

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「いいえ。騙されないわよ。神社の狛犬まで移動させて、手の込んだドッキリね? わかった。あなたはお父さんが言っていたお見合い相手……」  そこまで言ってから、『あ、違うな』と思った。  彼は父が好むようなタイプではないからだ。  祖父と同じデザインの甚平を着て、眠そうにあくびをひとつ。  ぼんやりした容姿にぼさぼさ頭は父と真逆だ。 「ごめんなさい。勘違いです」  お見合い相手の可能性を捨てた。 「うん。そろそろ店にお客がやってくるから、ついでに立栞(りつか)のごはんも作るよ」  慌てて体の上から退き、何事もなかったかのようにとりつくろった。 「初対面から呼び捨て!?」 「昔から知ってるから、しかたないよね」 「私はあなたのことを知らないわよ」 「知ってるよ。いつも手を合わせて俺を見てたくせに」  犬が動く前に伸びをするように、彼も大きく体を伸ばした。 「さて、作るか」  祖父が使っていた厨房は玄関入ってすぐそこにある。  配達しやすいように玄関の近くに厨房があるのだ。  家は二階建てで、昔は一階が宴会ができるような座敷、二階を住居部分に使っていたとか。 「開店時間だ」
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