3 怪しい男

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「おじいちゃんが亡くなった頃?」 「そうだよ」  父たちが祖父の遺産をどう分けるか、もめていたせいで近寄れなかった期間がある。  たぶん、父はこの家を引き受けたくなかった。  だから、私にも出入り禁止を言い渡していたのだとわかる。  でも、長男の父が押し付けられるかっこうになったのだろう。  ――私の人生に関わる結婚と天秤にかける程度には困ってるなんて、お父さんってば怖がりなんだから。  小学生の女の子でさえ、こんな気軽にやってくるというのに、情けない話である。 「彩友ちゃんくらいの時から、遊びにきてたかな。彪助の真似をして、よく料理と作ってたよ」 「ふぅーん。狛犬さんが言うなら信じてあげる」  彩友ちゃんは渋々といった様子だけど、とりあえず私の存在を認めてくれたようだ。 「彩友ちゃん。暗くなるから、早く帰った方がいい」 「はぁい、狛犬さん。またね!」  彩友ちゃんは走っていった。    ――どうやら、本当に狛犬らしい。 「食事できたよ。食べる?」 「えっ! う、うん……。ありがとう」  厨房の片隅に古い木のテーブルと椅子が置いてあった。
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