814人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
「おじいちゃんが亡くなった頃?」
「そうだよ」
父たちが祖父の遺産をどう分けるか、もめていたせいで近寄れなかった期間がある。
たぶん、父はこの家を引き受けたくなかった。
だから、私にも出入り禁止を言い渡していたのだとわかる。
でも、長男の父が押し付けられるかっこうになったのだろう。
――私の人生に関わる結婚と天秤にかける程度には困ってるなんて、お父さんってば怖がりなんだから。
小学生の女の子でさえ、こんな気軽にやってくるというのに、情けない話である。
「彩友ちゃんくらいの時から、遊びにきてたかな。彪助の真似をして、よく料理と作ってたよ」
「ふぅーん。狛犬さんが言うなら信じてあげる」
彩友ちゃんは渋々といった様子だけど、とりあえず私の存在を認めてくれたようだ。
「彩友ちゃん。暗くなるから、早く帰った方がいい」
「はぁい、狛犬さん。またね!」
彩友ちゃんは走っていった。
――どうやら、本当に狛犬らしい。
「食事できたよ。食べる?」
「えっ! う、うん……。ありがとう」
厨房の片隅に古い木のテーブルと椅子が置いてあった。
最初のコメントを投稿しよう!