3 怪しい男

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 もしかしたら、彼の正体がわかるかもしれないから。  そんな期待もあったけれど―― 「そのうちね」  ――残念ながら教えてもらえなかった。 「あなたばかり私を知ってるなんて、ずるいわ」 「年長者に対する敬意が足りてないから」 「え? 年長者?」 「俺は君よりずっと年上だ」  狛犬だから、自分のほうが年上であると彼は主張してるけど、外見年齢は同じくらいなのだ。  それに浮世離れしているからか、話していても私よりずっと年下に感じる。  年上扱いされず、彼は不満そうにしていたけど、卵を焼くのに忙しいようで、それ以上なにも言わなかった。 「もういいわ。狛犬で」  疲れていたし、堂々巡りになりそうな気がしてやめた。 「狛犬だって言ってるのに」 「狛犬ね。わかりました。おとなしく食事をいただきます」  仕事の邪魔をしてはいけないと思って、私も黙って食べることにした。  ――祖父の店を遊びでやってるなら、許さないんだから!  久しぶりの温かい味噌汁と炊きたてご飯、だし巻き卵。  箸で金色のだし巻き卵を切る。
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