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私が悪いことを言ってしまった気がして、慌てて私は謝った。
彼の外見と中身が違いすぎて、なんだか調子が狂う。
「でも、その……あなたがここで暮らしてるなら、私はいらな……むぐっ!?」
出ていくと言おうとしたのに、言う前に口の中にきんぴらごぼうを詰め込まれた。
香ばしいゴマと甘じょっぱいきんぴらごぼうの味が広がる。
――想像通りの美味しさ!
きんぴらごぼうを味わっているうちに、狛犬が先手必勝とばかりに私に言った。
「一緒に暮らせばいいよ。彪助から立栞のことは頼まれている。そこの神社の狛犬だし、俺の身元もはっきりしているしね」
――まだ、犬を主張するの? しかも、本人は身元証明のつもりか住所まで言ってきたけど、小さな神社が住まいってありえませんからっ!
咀嚼時間が長いきんぴらごぼうのせいで、思っていることを口に出せず、これからのことを頭の中で考えるしかなかった。
まず、私は父から家の管理を任されている。
でも、彼も祖父から店を頼まれている(なぜか私のことも)。
そして、狛犬を自称する彼は『山路』の味を完璧に表現できる申し分ない料理人。
となると、答えは――
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