5 祖父の後継者

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――自称狛犬が私を待っていたというのは本当だった。  その場しのぎの言葉だと思っていたのに、違うと気づいたのは、眠りに落ちてからのことだった。  私が眠った布団は、お日様の匂いがして、洗いたてのパリッとした肌触り。  白い障子戸の部屋は遮光カーテンと違い、朝日が昇ると室内を白く照らす。  太陽の光で目覚めたのは、久しぶりかもしれない。  吉浪で働いていた頃は、夜遅くに帰っていたから、朝日とともに起きる習慣はなかった。  張り替えられた真新しい白い障子紙が、誰かがやってくるのを待っていたと教えていた。 「おやすみからおはようまで至れり尽くせりで、食事まで作ってもらって……犬に。本当に犬?」  急ごしらえで用意できるものではない。    ――本当に狛犬なのかも? いやいや! そんなわけないでしょ!  ご飯ひとつで、あっさり怪しげな男を信用してしまいそうになる単純な自分。  でも、体調がいいのは間違いない。  ぐっすり眠れたからか、重かった頭と体が軽く感じる。 「まさかご利益……?」  いつもに比べてだけど、目覚めは悪くなく、布団から這い出ると、部屋の窓を開けた。
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