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自分がどれだけアパートの部屋にこもり、人と関わらずにいたのかわかりって自己嫌悪に陥った。
もっと気持ちの切り替えがうまければ、次の仕事もすぐに見つかって、こんなグダグダせずに済んだ。
それが、やりがいだとか目的だとかにこだわって、悩みすぎて動けなくなる。
そして、父親に言われるまま、お見合いからの結婚コースへと……
仕事を辞めたと報告した後、見合い写真を片手にアパートへ押し掛けた父親の顔を思い出し、ぶるっと震えた。
天下を取ったような顔の父親は、将軍にでもなったつもりか、私に実家へ帰れと命じ、無理やり連れ戻そうとした。
もちろん、断固として拒否。
あの時に持っていたお見合い写真は一枚だったけど、時間の経過とともに増えてそうな気がしてならない。
洗面所の鏡に映った自分の顔を眺めた。
――私は二十六歳。結婚しろって、うるさく言われてもおかしくない年齢。悩んでいられる時間はそんなに多くないってわかってる。
心なしか昔より化粧のノリも悪くなった気がする。
ため息をつき、足音を立てないように、そっと階段をおりていく。
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