5 祖父の後継者

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 ――簡単に食べられるものを買ってこよう。コンビニかスーパーでいいや。  大掃除をする必要がなくなり、私がやることといったら、祖父の遺品整理くらいだけど、父に報告したほうがいいだろうか。  祖父が家の管理ができる人間を生前に頼んであったと、父はまだ知らないのだ。  私は彼が本当に狛犬だなんて思ってない。  私の頭の中で、彼は人間の男性として認識されていた。  昨日みたいに食べ物で騙されると思ったら、大間違いなんだから!  犬だと言っていたのは、きっと彼の冗談―― 「ぎゃっ!」  階段をおりた先の玄関に、白い犬がいた。 「い、犬? 迷い犬ですか?」  犬は丸まって眠っている。  近くで見るとかなり大きくて、どこか神々しい。  昨日、竹林の小径で見た白い犬だと気づいた。  犬は眠いらしく、わずかに目を開けた。 「ま、まさか、犬? いえ、本当に狛犬だった?」  眠そうな顔から思い出すのは、自称狛犬の彼だけ。  失礼だけど、犬の時も人間の時も変わらず、気の抜けた顔をしていたから、すぐにわかった。  神々しいのはたしかだけど、性格は隠しきれないようだ。  黒い瞳が私を見ている。
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