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「私が絶句したのは、態度がでかいと思ったからじゃないのよ!?」
長生きすぎて、やっぱり人じゃないんだと思ったからだ。
彼はいったい何歳なのだろう。
山路の初代を知ってるなら江戸時代まで遡る。
「俺は山路の味を昔から知っている。その姿も見てきた」
彼は山路の一番美味しい味を知っているということだ。
――山路のすべて。
それは狛犬ではなく、私が受け継ぐべきものだったのではないだろうかと、今になって気づく。
彼の黒い目の中に、私の戸惑う姿が見えた。
でも、彼が山路の料理を教えてくれたとしても、今の私ではなにも作れない。
息苦しくなって、胸元を掻いた私に、白い毛に覆われた足(手)がスッとなにかを差し出した。
「立栞。これ、財布。お菓子は一個まで」
――うわ、完全に子供扱いされてる。
狛犬のお願いはおつかいといえど、叶えなければいけない気がして、おとなしく財布を受け取った。
「今まで買い出しはどうしていたの?」
「二十四時間スーパーとか、配達してもらったりとか……」
「昼間は人の姿になれないの?」
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