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この道を歩くのが好きだけど、今日ばかりは早く竹林が終わってくれないかと期待する自分がいた。
やっと玄関に到着し、倒れ込むように中へ入った。
その時、狛犬は不審者と間違えたのか、吠えながら出てきた……
「ただいま。怪しい人間じゃありません。ぐはっ!」
巨体でどんっと体当たりされ、口から内臓が飛び出すかと思った。
それは主が帰ってきて喜ぶ犬そのものの姿だった。
――うわ、狛犬とか言ってたけど、完全に犬。
犬の彼をなだめるために頭をなでた。
力尽きていた私は、そのまま玄関前の廊下に転がって、犬と戯れる。
戯れること数分、ハッと我に返った。
――いやいや、あなたは犬じゃなくて狛犬でしょ。
それも成人男性の体を持つ。
私が気づいた頃には、狛犬は大量の食材を前足でカリカリしていた。
「もしかして、傘地蔵?」
「誰が地蔵よ」
「じゃあ、ごんぎつね」
「それ、最後に撃たれて死ぬんですけど……」
倒れて動かない私の頭をフサフサの尻尾がなでていった。
正直、もう限界で、化粧を落として横になりたい。
「立栞。起きれる?」
「無理……」
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