6 山路の狛犬様

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「そっか……」  彩友ちゃんはしゅんとしてうつむいた。 「どうしたの?」 「ご飯を作ろうと思ったんだけど、ママがいない時、火を使っちゃだめだって言われてて……」 「お母さんはお仕事?」 「そうだよ。彩友のママは忙しいの。ご飯を作るの大変って言ってたから、彩友ができたら、ママは助かるでしょ?」  彩友ちゃんは賢くて、なんでもできる子なんだと思う。  髪を上手に結んでるし、服もきちんとしている。  大人相手にも自分の気持ちをはっきり伝えられる利発な子だ。  ――私、十二歳の子に負けてる。    なんだか情けない気持ちになった。 「えっと、じゃあ、私がなにか作るわ」 「お姉ちゃんも狛犬さんみたいに料理ができるの?」 「たぶん……」  自信はなかった。  でも、彩友ちゃんのために、なにか作りたいと思った。 「お茶を飲んで、少し待っててくれる?」 「うん! 彩友のママは夕方に帰ってくるから大丈夫!」  彩友ちゃんは長椅子に座って、ピンク色のスマホを取り出した。 「ママに夕ごはんは心配しないでねって送っておこう!」  嬉しそうな顔にプレッシャーを感じる。
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