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「そっか……」
彩友ちゃんはしゅんとしてうつむいた。
「どうしたの?」
「ご飯を作ろうと思ったんだけど、ママがいない時、火を使っちゃだめだって言われてて……」
「お母さんはお仕事?」
「そうだよ。彩友のママは忙しいの。ご飯を作るの大変って言ってたから、彩友ができたら、ママは助かるでしょ?」
彩友ちゃんは賢くて、なんでもできる子なんだと思う。
髪を上手に結んでるし、服もきちんとしている。
大人相手にも自分の気持ちをはっきり伝えられる利発な子だ。
――私、十二歳の子に負けてる。
なんだか情けない気持ちになった。
「えっと、じゃあ、私がなにか作るわ」
「お姉ちゃんも狛犬さんみたいに料理ができるの?」
「たぶん……」
自信はなかった。
でも、彩友ちゃんのために、なにか作りたいと思った。
「お茶を飲んで、少し待っててくれる?」
「うん! 彩友のママは夕方に帰ってくるから大丈夫!」
彩友ちゃんは長椅子に座って、ピンク色のスマホを取り出した。
「ママに夕ごはんは心配しないでねって送っておこう!」
嬉しそうな顔にプレッシャーを感じる。
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