6 山路の狛犬様

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 美味しいけど、それはいつも食べたい味ではない。  今、求められているのは祖父の味なのだ。  ――でも、否定された味でいいの? それとも、私がいいと思った味?  混乱と焦り、頭ではわかっていたのに、気づいたら、吉浪のだし巻き卵が出来上がっていた。    ――違う。彩友ちゃんが食べたいのは、この味じゃない。  どれだけ綺麗にできても、これは失敗作だ。  ――どうしたらいいの。    呆然として、動けなくなった。
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