811人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
動けなくなった私の背後に気配がした。
それは懐かしい気配で、私を助けに来てくれたんだと思った。
振り返った私の視線の先に、藍色の甚平が見えた。
「おじいちゃん?」
「残念、彪助じゃないよ」
私の手から卵焼き器を受け取ると、残っていた卵液を手にする。
「ま、待って。その味は……」
冷蔵庫から、きんぴらごぼうを取り出し、細かく刻んで卵の中に入れて焼く。
出来上がった卵焼きを皿にのせた。
「食べてみて」
私の前に置くと、すぐに彩友ちゃん用の卵焼きを焼いて、私がむいた里芋を揚げ出しにする。
余り野菜をかきあげにするのも同じ。
最初のコメントを投稿しよう!