7 竹の春

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 動けなくなった私の背後に気配がした。  それは懐かしい気配で、私を助けに来てくれたんだと思った。  振り返った私の視線の先に、藍色の甚平が見えた。  「おじいちゃん?」  「残念、彪助じゃないよ」   私の手から卵焼き器を受け取ると、残っていた卵液を手にする。 「ま、待って。その味は……」  冷蔵庫から、きんぴらごぼうを取り出し、細かく刻んで卵の中に入れて焼く。  出来上がった卵焼きを皿にのせた。 「食べてみて」  私の前に置くと、すぐに彩友ちゃん用の卵焼きを焼いて、私がむいた里芋を揚げ出しにする。  余り野菜をかきあげにするのも同じ。
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