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「性格はおじいちゃんに似てるって言われるけど、現比のほうが似てる気がするわ」
「一緒にいる時間が長かったからね」
私が祖父と過ごした時間より、現比のほうがきっと長い。
狛犬の彼が言うには、初代の頃から知っているという。
「竹林が気になるのは当たり前でしょ。山路といえば竹林と竹の子料理! 春が一番の儲けどきだって、おじいちゃんが言ってたわ」
「初代から竹の子料理は有名だったな。焼いた竹の子に塩を振るだけでうまい」
掘ったばかりの竹の子はみずみずしく、えぐみがない。
アクを抜かずに食べれるくらい甘くて美味しい。
だから、焼いて塩を振るだけで美味しいのだ。
やわらかく、みずみずしい竹の子の食感を思い出し、食いしん坊の私はうっとりした。
「昔は竹は食べるためというより、生活の一部だった」
現比は懐かしそうに空を見上げる。
大通りでは、あまり見かけないトンボだけど、奥まった山路の敷地にはたくさん飛んでいる。
私も現比と同じようにトンボを眺めていた。
――ここだけ時間が止まっているみたい。
「風が冷たい。中へ入ろう。立栞の夕飯はもうできあがってるよ」
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