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「うん。ありがとう」
私と現比の同居生活が始まった、
同居といっても、上の階と下の階で別々に住んでいるから、ルームシェアをしているような感覚だ。
現比が毎食の食事を用意してくれるから、私は他の家事を担当する。
昼間のうちに材料の買い出しをしたり、掃除をしたりと、なにかと忙しくしていた。
最近は起き上がれる時間が前より長く、自分でもびっくりするくらい活動的だ。
――食事って大事なのね。
現比が用意してくれる食事は、いつもどこか懐かしい。
「わあ! 栗ごはん!」
厨房の片隅に用意された椅子は、昔から私の定位置で、現比はそこに食事を準備してくれる。
おじいちゃんが生きていた頃と同じで、それが余計に懐かしくなるのかもしれない。
「立栞。もう少ししたら、一緒にギンナンを拾いに行こう」
「昼間に動いて大丈夫? 人の姿は疲れるんでしょう?」
「犬の姿で行く。山なら犬がいても警察を呼ばれないから」
――あっ……呼ばれたことあるんだ。
買い物する犬がいるから、許される気がするけど、狛犬姿の現比は大きな狼みたいで、通報されてもおかしくない。
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