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「昔はおじいちゃんとギンナンを拾いに行ったわ。茶碗蒸し、炊き込みご飯……。秋は食べるものがたくさんあるわね」
ギンナンは冬になったら、保存しておいたギンナンをフライパンで炒って、塩をかけて食べる。
緑色の実が香ばしくて、もっちりしていて美味しいのだ。
お酒のおつまみにもいい。
「栗はどこから手に入れたの?」
「ん? 友達が持ってきてくれた」
炊き立ての白いごはんに栗がたっぷり入っている。
お弁当にまで入るくらいの栗を拾うのも大変だし、この辺りに栗の木はない。
わざわざ遠くから栗を持ってきてくれるなんて、とても親切な友達だ。
淡い黄色に染まる贅沢なごはんを口に放り込む。
栗の実は口の中でほろほろ崩れ、優しい甘さだ。
自然の甘さが心を穏やかにし、体にいいものを食べているという気持ちにさせる。
「ねえ、現比の友達ってどんな人? 栗をこんなたくさん持ってきてくれるなんて、ありがたいわね」
今日のお弁当を買いに来るお客様は、こんな美味しい栗ごはんを食べられてラッキーだと思う。
「狸だよ」
「え?」
「狸。山の祠に住んでるんだ。今日、弁当を買いにくる」
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