1 母の誘い

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 私は料理をまだ作れずにいるけど、お弁当の盛り付けと包装を手伝い始めたから、現比は少しだけ手を広げた。  夕飯を食べて、後片付けをしたら二階へ引っ込む。  二階では、お客様の微かな気配がして、それは嫌なものではなかった。  ――思えば、おじいちゃんが生きていた頃も似たような雰囲気だった気がする。お客様は人だったのかな。  まさかねと思いながら、焼きたてのサンマを口にする。  炭火で焼いたサンマは香ばしく、皮に箸をいれると、ぱりっとして中からふんわりした身が顔を出す。 「秋の恵みよ。ありがとう」  おかわりしようとして、手がスマホにぶつかった。 「あれ? お母さんから?」  スマホに母の名が表示されていることに気づいた。 『立栞ちゃん。日曜日、一緒にお食事しない? 蓮華楼(れんかろう)さんなんだけど、好きでしょう?』    そんなメッセージが送られてきていた。  母が食事に誘った蓮華楼は有名な老舗料亭で、腕がいい料理人を多く揃えている店だ。  六代目の料理長は、おじいちゃんと懇意にしており、私も何度か料理を食べさせてもらった。
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