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私は料理をまだ作れずにいるけど、お弁当の盛り付けと包装を手伝い始めたから、現比は少しだけ手を広げた。
夕飯を食べて、後片付けをしたら二階へ引っ込む。
二階では、お客様の微かな気配がして、それは嫌なものではなかった。
――思えば、おじいちゃんが生きていた頃も似たような雰囲気だった気がする。お客様は人だったのかな。
まさかねと思いながら、焼きたてのサンマを口にする。
炭火で焼いたサンマは香ばしく、皮に箸をいれると、ぱりっとして中からふんわりした身が顔を出す。
「秋の恵みよ。ありがとう」
おかわりしようとして、手がスマホにぶつかった。
「あれ? お母さんから?」
スマホに母の名が表示されていることに気づいた。
『立栞ちゃん。日曜日、一緒にお食事しない? 蓮華楼さんなんだけど、好きでしょう?』
そんなメッセージが送られてきていた。
母が食事に誘った蓮華楼は有名な老舗料亭で、腕がいい料理人を多く揃えている店だ。
六代目の料理長は、おじいちゃんと懇意にしており、私も何度か料理を食べさせてもらった。
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