814人が本棚に入れています
本棚に追加
/109ページ
私が失礼で無愛想だと言っているのと同じ。
でも、私はそれを甘んじて受けるしかなかった。
私には弟が一人いる。
しっかり者の弟は、父の跡を継ぐべく、大学卒業と同時に、父の会社に入社して仕事を手伝っていた。
母も母でしたたかさがあり、お嬢様育ちだけど、学生時代の友人や実家の関係者など、普通では作れないようなコネクションを持つ。
父はそれで何度も母に助けられている。
つまり、料理人になりたいなどと言い出した娘は、家族にとってなんの役にも立たない娘なのである。
せめて親の顔を立てて、お見合いしろというわけだ。
――しかも、料理人になるどころか無職だから、親からの風当たりが強いのも仕方がないわ。
とぼとぼと銀杏の葉と紅葉が落ちた道を歩く。
昨晩の雨で、地面にはりついた黄色と赤の模様。
蓮華楼は道の端に落ちた葉をあえて掃除せず、そのまま残し、季節の移ろいを感じてもらおうというのだろう。
駐車場を出たら、料亭までの道は立派な日本庭園が続く。
正面入り口は『蓮華楼』の看板が存在感を放っていた。
「蓮華楼さんの食事は本当によかったわ。またお願いするわね」
最初のコメントを投稿しよう!