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永祥さんを見た時、吉浪で言われた言葉がフラッシュバックした。
『山路立栞さん。君の頑張りをずっと見てきたつもりだ。今度、ホテルに新しい店を出すんだが、接客係として頑張ってもらえないだろうか?』
『悪い話じゃない。将来的には女将として、吉浪の店舗をひとつを任せたいと思っているんだ』
――私の料理人としての腕を否定した人。
その人が私のお見合い相手となって目の前にいた。
「早く座らないか」
「立栞ちゃん。びっくりしたでしょ? 吉浪さんはね、前々から立栞ちゃんをぜひお嫁さんにくださいって言っていたのよ」
なにも言えないまま、両親に促され、用意された席に着く。
混乱していて、うまく頭が回らない。
――さっき、蓮華楼の女将はなんて言っていた?
私の大事な日だからと、前から知っていたような口ぶりだった。
それに沙耶音も吉浪に入らない方がいいと、私に忠告していた。
沙耶音は色々なお座敷に呼ばれるから、表で話せないようなことを知っていてもおかしくない。
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