4 犬は知っている

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「やあ。清介(きよすけ)」  ――狛犬登場。ただし、人の姿で。  現代風にしようとしたのか、パーカー姿で登場した。  でも、現比(ありひさ)は、うっかり店に迷い込んだとしか思えない格好で、蓮華楼(れんかろう)の雰囲気に溶け込んでない。  狛犬というだけで怪しいのに、ますます怪しく見えた。 「蓮華楼に叱られるわ。叱られる前に帰るわよ!」    だらしない格好は店の雰囲気を台無しにすると言われ、娘の沙耶音(さやね)がジーンズで姿を見せるだけで叱られるのだ。  つまみだされるかもしれない。  犬だし…… 「俺を蓮華楼が叱る?」  いつもぼんやりしている現比なのに、今日は違っていた。  父を見ると、現比を指さし、口をパクパクさせている。 「り、り、立栞。そいつはっ……いや、こ、こ……」 「清介も偉くなったものだ」  柱に寄りかかり、現比は笑う。  その顔は大学生というより、永い時を生きた者だけが持つ威圧感があった。  若いはずなのに若くない――その不気味な空気を永祥(ながゆき)さんも感じ取ったのか、黙って現比の様子をうかがう。
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