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「木から降りれなくなって、泣いていたのを助けてやったろう?」
「うああああ!」
「妹と弟のおやつを盗み食いして、親からゲンコツをくらった。おねしょの数は……」
「待て! いや。待ってください」
幼い頃から父を知っているため、数多くの弱みを握る狛犬。
おねしょの数まで言えるとか、恐怖でしかない。
いちはやく、母が年齢と会話が合わないことに気づき、父に問う。
「ねえ、あなた。いったい、どなたなの?」
「山路の古い関係者だ!」
母は不思議そうな顔をしているけど、竹林の小径にある神社の狛犬と知っているのは、私と父だけだ。
「清介。今は彪助の跡を継いで、山路をやってるのは俺だ」
「な、なんだって!? 立栞と暮らしてるのは、こまっ……こ、こま……」
どうしても『狛犬』と言いたくない現実主義な父。
神社の狛犬が人の姿になって、自由に歩き回っているという現実を認めたくないのだ。
そんな父に反して、永祥さんは現比を人と思って話す。
「立栞さんの料理の師は彼というわけかな?」
「そうです。山路の味を受け継ぐ料理人ですから、彼から学びたいと思っています」
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