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エピローグ
表札に松木と書かれた家のリビングに母親と娘がいた。彼女たちはテレビで歌番組を見ていた。母親は娘に向かって、ふと思い出したことを語り出す。
「そういえば、亡くなったおじいさんは歌が好きだったのよ」
「へぇ~、そうだったの?」
「あんな恐ろしいことが起きなかったら、今頃はきっと商店街のカラオケ大会に出ていたわね」
「ん!? お母さん、あんな恐ろしいことって何?」
「あれはおぞましい事件だったわ」
「えっ、恐ろしいではなく、おぞましい事件?」
「そうよ」
「おじいさんは自転車で転んで、たまたま頭の打ちどころが悪くて亡くなったんじゃなかったの?」
「それは私たちが松木家の秘密を守るために作った世間的な話。警察の捜査力は半端ないわ。密室にも関わらず、事件の真相が明らかにされたのだから」
「何それ。私は初耳なんだけど。真実は違うってことなの?」
「そうなのよ。あなたも松木家の秘密を守れるなら事件の真相を教えてあげる」
「私、おじいさんの名にかけて秘密は守る!」
「分かったわ。じゃあ、教えてあげる」
「うん」
「あれはね、山奥の露天風呂が有名な山荘におじいさんが訪れたことで、世にも残酷な事件が幕を開けるの。おじいさんは…」
母から娘、そして娘から学校の友達、さらに学校の友達から見ず知らずのSNSフォロワー達に松木家おじいさんの事件は実名で語り継がれることになった。
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