プロローグ

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プロローグ

「はあ、はあ!」 野心に満ちた男の鼻息は非常に荒かった。北関東に位置する山奥で、ある男が湿った岩場を登っている。スパイダーマンのように手足を広げて岩にへばりついた格好だ。 男はボルダリング選手のような細身で無駄のない筋肉質の体でなく、ブヨブヨのお腹が目立つメタボな中年だった。今にも岩場から転げ落ちそうだが、その男は何かを成し遂げたいという強烈な根性だけで岩に掴まっていた。 遂に男は岩場の頂上に手をかけ、最後の力を振り絞り、足で踏ん張ろうとした。しかし、普段の運動不足がたたって足がツルっと滑った。 「うわーっ!」 ゴン。 男は岩場から転落した。幸運にも周囲に男以外は誰もいなかった。
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